東松島ステッチガールズがデンマーク刺繍のクロスステッチの製造販売を始めて、ことしで4年になります。きっかけは震災後、刺繍の先生でもあるタレントの岡田美里さんの呼びかけで始まったワークショップです。手仕事は女性たちの収入になり、心の励みになりました。活動を支えていた東松島みらいとし機構は2014年、刺繍を仕事として続けていきたいという女性たちの賛同を得て事業化を図りました。現在、作り手は25人。東松島市はもちろん石巻市からも参加があります。
事業を続けるには経営の安定が求められます。不安はないかという問いに、事務局の東松島みらいとし機構の芳賀朋子さんは「今、まさに不安です」と答えます。
「復興支援で買っていただく時期は終わりました。また刺繍は工業製品のように大量生産ができない。労働力と価格のバランスが取りにくい製品の価値を、分かった上で購入していただくことの難しさを実感しています」。
作り手さんたちは図案に添って一針一針丁寧に糸を刺し、商品を仕上げます。納期もあれば検品もあります。間違いがあれば修正をかけます。その労力に見合った収入を得られればいいのですが、なかなかそうはいきません。
刺繍以外の収入源を確保するため、東松島ステッチガールズは昨年からオリジナル刺繍キットやビショップ(刺繍を施したワンピース)キットなど、商品の幅を広げました。作り手の伊藤早苗さんは、東松島ステッチガールズの魅力を「自分の作った物が売れていき、オリジナルの商品を開発できる喜びがあること」と話します。
東松島ステッチガールズの活動拠点は仮設商店街の一画にあります。「復興の進展に伴って、ここも撤去する予定です。今後集まる場所をどうするか、活動の形態をどうするか、これから考えていかなければなりません」(芳賀さん)。
東松島ステッチガールズには「東松島を刺繍のまちとして広めていく」という大きな夢があります。震災を契機に生まれた夢を震災の風化で終わらせないために、芳賀さんや伊藤さんたちはこれからも前向きな気持ちを分かち合いながら事業を進めていこうとしています。